3年で辞めた若者はどこへ行ったのか ―アウトサイダーの時代

城繁幸 著 / 筑摩書房

前作「若者はなぜ3年で辞めるのか」から1年半、「昭和的価値観」に見切りをつけた若者達の生き方を追ったドキュメントです。

  • はじめに
  • 第1章 キャリア編
    • 昭和的価値観1「若者は、ただ上に従うこと」―大手流通企業から外資系生保に転職、年収が二〇倍になった彼
    • 昭和的価値観2「実力主義の会社は厳しく、終身雇用は安定しているということ」--新卒で、外資投資銀行を選んだ理由
    • 昭和的価値観3「仕事の目的とは、出世であること」―大新聞社の文化部記者という生き方
    • 昭和的価値観4「IT業界は3Kであるということ」―企業ではなく、IT業界に就職したという意識を持つ男
    • 昭和的価値観5「就職先は会社の名前で決めること」―大手広告代理店で、独立の準備をする彼
    • 昭和的価値観6「女性は家庭に入ること」―女性が留学する理由
    • 昭和的価値観7「言われたことは、何でもやること」―東大卒エリートが直面した現実
    • 昭和的価値観8「学歴に頼ること」―会社の規模ではなく、職種を選んで転職を繰り返し好きな道を切り開く
    • 昭和的価値観9「留学なんて意味がないということ」―大手企業でMBAを取得後、安定を捨てた理由
  • 第2章 独立編
    • 昭和的価値観10「失敗を恐れること」―大企業からNFL
    • 昭和的価値観11「公私混同はしないこと」―サラリーマンからベストセラー作家になった山田真哉
    • 昭和的価値観12「盆暮れ正月以外、お墓参りには行かないこと」―赤門から仏門へ、東大卒業後、出家した彼の人生
    • 昭和的価値観13「酒は飲んでも呑まれないこと」―グローバルビジネスマンからバーテンダー
    • 昭和的価値観14「フリーターは負け組だということ」―フリーター雑誌が模索する、新しい生き方
    • 昭和的価値観15「官僚は現状維持にしか興味がないということ」―国家公務員をやめて、公務員の転職を支援する生き方
    • 昭和的価値観16「新卒以外は採らないこと」―リクルートが始めた、新卒以外の人間を採用するシステム
    • コラム(1) 企業に求められる多様化とは
    • 昭和的価値観17「人生の大半を会社で過ごすこと」―職場にはりついているように見える日本男子の人生
    • 昭和的価値観18「大学生は遊んでいてもいいということ」―立命館vs昭和的価値観
    • コラム(2) 二十一世紀の大学システム
    • 昭和的価値観19「最近の若者は元気がないということ」―日本企業を忌避しだした若者たち
    • 昭和的価値観20「ニートは怠け者だということ」―「競争から共生へ」あるNPOの挑戦
  • 第3章 新世代編
    • 昭和的価値観21「新聞を読まない人間はバカであるということ」―情報のイニシアチブは、大衆に移りつつある
    • 昭和的価値観22「左翼は労働者の味方であるということ」―二一世紀の労働運動の目指すべき道とは)
    • コラム(3) 格差のなくし方
  • あとがき

第1章と第2章では数々のアウトサイダー達の新しい価値観・生き方が紹介されており、本書のタイトルである3年で辞めた若者の行き先の実例が示されています。
そこには、前作で示された深刻な閉塞感に対する解答例があります。
本来は社会の変革を以って打破すべき閉塞的状況を、自力で突破しつつある若者達の姿は頼もしくもあり、少し羨ましくもあります。

しかし、本書の主題はむしろ第3章にあると感じました。
前作「若者はなぜ3年で辞めるのか」で行間から滲み出ていた既存権力に対する怒りと批判はより一層痛烈さを増し、明確なものになっています。
権力に対する批判者たるべきマスメディアと左派政党が、既に既得権益の保護者となっている現状、それに対する批判には大いに共感を覚えました。

第1章、第2章で示されたアウトサイダーたる若者の姿は昭和的価値観に対する一つのアンチテーゼではありますが、世代間格差の根本的な解決はやはり社会全体として取り組むべき問題だと思います。
社会全体として動かざるを得ない状況に至っているということを改めて感じました。