人月の神話 狼人間を撃つ銀の弾はない


フレデリック・P・ブルックス Jr./著  滝沢徹、牧野祐子、富沢昇/訳


言わずと知れたソフトウェア開発マネージメント論の古典です。

  • 二十周年記念増訂版序文
  • 初版の序文
  • 訳者まえがき
  • 第1章 タールの沼
  • 第2章 人月の神話
  • 第3章 外科手術チーム
  • 第4章 貴族政治、民主政治、そしてシステムデザイン
  • 第5章 セカンドシステム症候群
  • 第6章 命令を伝える
  • 第7章 バベルの塔は、なぜ失敗に終わったか
  • 第8章 予告宣言する
  • 第9章 五ポンド袋に詰め込んだ十ポンド
  • 第10章 文書の前提
  • 第11章 一つは捨石にするつもりで
  • 第12章 切れ味のいい道具
  • 第13章 全体と部分
  • 第14章 破局を生み出すこと
  • 第15章 もう一つの顔
  • 第16章 銀の弾などない − 本質と偶有
  • 第17章 「銀の弾などない」再発射
  • 第18章 「人月の神話」の命題 − 真か偽か
  • 第19章 「人月の神話」から二十年を経て
  • エピローグ 五十年間の不思議、興奮、それに喜び
  • 注釈及び参照文献
  • 訳者あとがき
  • 索引

著者はIBM OS/360の開発リーダー、原著の初版は1975年発行。
1995年に出版20周年を記念して、1986年に発表された論文「銀の弾などない」と1995年発表の論文「『銀の弾などない』再発射」が追加された改定版が出版ました。
既に改訂版が出版されて13年、初版から数えると実に33年が経過していますが、いまだに多くの示唆を与えてくれます。
たかがBlogの1エントリーで本書の重要性を伝えきることは出来ませんが、強く印象に残った一節を引用します。

ソフトウェア開発作業でもっとも困難なことは、完全で一貫した仕様書に到達することであり、
そして、プログラム構築の本質の多く部分は、実際には仕様書のデバッグなのである。

三十余年前に先達を悩ませ、そして今も我々ソフトウェア開発に携わる者を悩ませる問題の本質を鋭く衝いています。
ソフトウェア開発の歴史はその陰に潜む狼人間の如き生産性の問題との戦いの歴史でもあり、いつの時代でもプロジェクトリーダー達は人狼を一撃で灰燼に帰す銀の魔弾を希求して止みません。
高級言語統合開発環境オブジェクト指向プログラミング、アプリケーションフレームワーク、そしてアジャイルソフトウェア開発。
様々な武器を手にする度に我々はつかの間の勝利を得るものの、何度倒しても人狼は蘇り再び我々の前に立ちふさがります。
もしかしたら銀の弾など存在しないのかもしれない。
しかし、銀の弾ならぬ真鋳の弾でも数を浴びせれば人狼といえども屠ることが出来るかもしれない、使い古された鉛弾でも一時的に撃退することが出来るかもしれない。

懐疑主義とは悲観主義とは違う。
輝かしい進展は見えないが、実際のところそう決めてかかることはソフトウェアの本質とは離れている。
多くの頼もしい新機軸(革新)が着々と進められている。
それらを開発、普及、利用するという苦しいが一貫した努力こそ、飛躍的な革新をもたらすはずだ。
王道はない。しかし道はある。

人狼との戦いに赴くに際し、偉大なる先達のこの言葉を胸に刻みたいと思います。


人月の神話―狼人間を撃つ銀の弾はない (Professional computing series (別巻3))

人月の神話―狼人間を撃つ銀の弾はない (Professional computing series (別巻3))