定本 ラヴクラフト全集 第3巻 小説編III

ラヴクラフト全集の3巻目、1925年〜1927年までの作品が収録されています。

目次

  • レッドフック街怪事件
  • あいつ
  • 死体安置所で
  • 冷気
  • クスルウーの喚び声
  • ピックマンのモデル
  • 銀の秘錀
  • 霧の中の不思議の館
  • 幻夢境カダスを求めて
  • 附録I 合作作品
    • 這いうねる混沌
    • 死灰
  • 附録II HPL研究論文
  • 作品解題
    矢野浩三郎

1924年から1926年までの2年間は、ラブクラフトが生涯のほぼ全てを過ごしたロードアイランド州プロヴィデンスを離れ、一時的にニューヨークに移り住んだ時期にあたります。
この頃執筆された作品のうち、「レッドフック街怪事件」「あいつ」「冷気」の3作品には、ニューヨークに対する嫌悪感・恐怖感、あるいは憎悪が強く現われています。
プロヴィデンスに戻ってから書かれた「クスルウーの喚び声」では遂に本格的なコズミック・ホラーの幕開けを見ます。
クトゥルフ神話の「原典」たる重要な作品です。
最近広く流通しているテキストとは固有名詞の表記が異なりますが、本書における表記のほうがおそらく著者自身の意図に近いのではないかと思われます。
「幻夢境カダスを求めて」もラヴクラフトの思考世界を知る上では欠かせない作品です。
「光の都セレファイス」や「流離の王子イラノン」の集大成に当たる作品ながら、作者自身はこの作品を未完成とみなしていたとのこと。
作者の心象風景やイメージ世界のすべてが雑然と押し込められているため読み解くのに苦労しますが、様々な分析や考察の余地を含んだ興味深い作品です。