若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
作者: 城繁幸
出版社: 光文社
2年ほど前に出版され話題となった本書ですが、実はきちんと通して読んだことが無かったので改めて読んでみました。
以下、目次です。
- はじめに 「閉塞感の正体」を見きわめる
- 第1章 若者はなぜ3年で辞めるのか?
- 第2章 やる気を失った30代社員たち
- 第3章 若者にツケを回す国
- 第4章 年功序列の光と影
- 第5章 日本人はなぜ年功序列を好むのか?
- 第6章 「働く理由」を取り戻す
読み進めてすぐに気付いたのは、本書の主題はタイトルで掲げられている若者の離職率に関する問題ではなく、むしろサブタイトルである「年功序列」に対する告発であるということです。
序盤で若者の離職率の高さの背後にある深刻な閉塞感の原因を年功序列が引き起こす世代間の格差であると断じ、中盤以降は終身雇用と年功序列制度に代表される昭和的価値観に対する鋭い告発が展開されていきます。
序盤の論調は断定的で客観的資料に乏しく説得力に欠けるものですが、第3章以降の年功序列制度に対する問題提起は理路整然としており高い説得力を伴います。
また、冷静な筆致ながら著者自身の怒りと同世代の若者に対する共感、そしてこの国の将来に対する強い危機感が行間から感じさせられます。
但し、最後まで読み進めても問題に対する解決策は示されていません。
一端として真の意味での成果主義や職務給制度の導入等を挙げてはいますが、それでは世代間の格差が個人間の格差に形を変えるだけではないでしょうか。
また、最終章において著者は若者達に「声を上げよう」と呼びかけますが、果たして彼らが社会の仕組みを変える大きな声を上げることができるのか、昭和的価値観に縛られたリヴァイアサンを動かすことができるのか。
私はとても楽観的にはなれません。
とはいえ、格差社会の元凶たる昭和的価値観に対する告発書として一読の価値はあります。
秋葉原通り魔事件などに関連して派遣の問題が論じられる昨今ですが、本質的な問題点を見誤らないためにも本書のような良書に触れることの重要さを感じました。
若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)
- 作者: 城繁幸
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/09/15
- メディア: 新書
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