ジオン軍の失敗

アフタヌーン新書 006 ジオン軍の失敗

アフタヌーン新書 006 ジオン軍の失敗

アニメ「機動戦士ガンダム」の世界を史実と仮定し、そこに現実世界の理論を当てはめて大真面目に検証しようという、一種の遊びがあります。
古くはミノフスキー物理学を産み出した「ガンダムセンチュリー」や、最近では「グレート・メカニック」による緻密な軍事的・技術的考察が挙げられます。
本書も同じような体裁を採っていますが、著者はあの岡嶋裕史。単なるガンダム本ではありませんでした。
一言で言えば、ガンダム世界を例題にした失敗学の教科書です。

  • はじめに
  • 序章
  • ジオン革命概論
  • 第一章 MS-06FザクII
    技術においては、「寿命の長さ」は必ずしもいいことではない
  • 第二章 MS-06R高機動型ザクシリーズ
    技術規格を増やすのは善か悪か
  • 第三章 MS-07グフ
    進化しすぎた技術は、環境変化で絶滅する
  • 第四章 MS-09Rリックドム
    あるセグメントで成功した技術が、別のセグメントでも成功するとは限らない
  • 第五章 MS-14ゲルググ
    投入するタイミングを失した技術は、どんなに優秀でも成功しない
  • 第六章 MSM-03ゴッグ
    突出したスペックを持つ製品は、きわめて運用しにくいものになる
  • 第七章 MSM-04アッガイ
    「使う人がいない」製品は、なぜできあがるのか
  • 第八章 MSM-07ズゴック
    仕様はどこかで決断しなくてはいけない
  • 第九章 MAM-07グラブロ
    モビルアーマーの存在意義を問う開発事例
  • 第十章 MA-08ビグ・ザム
    ビグ・ザムが量産の暁には、ほんとうにジオンは勝てたのか
  • 第十一章 MSN-02ジオング
    フラッグシップモデルは造るべきか?
  • 終章
  • あとがき

ガンダムファンにはお馴染みのMS・MAの失敗原因を分析しつつ、その実は現実世界における事例の投影になっています。
冒頭で作者自身も述べていますが、馴染み深い題材のために(ある世代にとっては)一般的なビジネス書や教科書より強いリアリティを持って接することができるでしょう。
尤も、本書で取り上げられている理論自体は既に定説として確立されているものに基づいていますので、新たな発見にはあまり期待できません。
あくまでも、出来の良いわかりやすい入門書という位置付けになりそうです。
ガンダム本としても十分楽しめましたし、この路線での続編にも期待させる出来でした。