定本 ラヴクラフト全集 第2巻 小説編II
- 作者: 矢野浩三郎
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 1984/11
- メディア: ?
- この商品を含むブログ (1件) を見る
1922年から1924年いっぱいまでに書き上げられた作品が収められています。
この時期はラヴクラフトの30代前半にあたり、彼の生涯で重要な事件が相次いだ時期でもありました。
第1巻収録作品と比較すると小説の内容も充実してきて、初期から中期の頂点をなす作品もこの時期に書かれています。
目次
第2巻の目玉は初期の傑作「壁のなかの鼠」ですね。
そこには、『先祖が残した館に主人公が移り住み、物語が進むにつれて次第に恐ろしい過去の秘密が明らかになる』というクトゥルフ神話の黄金パターンの原型を見ることができます。
初期のクトゥルフ神話作品として分類されることもある「妖犬」では小道具として「ネクロノミコン」が登場しています。
未だラヴクラフト作品の真骨頂たる宇宙的恐怖には至っていませんが、物語の構成はかなり安定感が出てきました。
附録Iの合同作品に挙げられた「ファラオとともに幽閉されて」は「脱出王」の異名で知られる稀代の魔術師フディーニの作とされていますが、実態は全てラヴクラフトのゴーストライトによるものであり、ラヴクラフト作品と呼んで差し支えのないものです。