利益力の源泉─いかに付加価値を創出するか


著者: 池田 和明
出版社: ダイヤモンド社


若者はなぜ3年で辞めるのかの読後の閉塞感を紛らわせるべく、前向きっぽい雰囲気に惹かれて手にした本です。

  • はじめに
  • 序章 利益の源泉
  • 第一章 日本企業には「付加価値創出力」が求められている
  • 第二章 クリティカル・リソースとは何か
  • 第三章 クリティカル・リソース経営モデルを構想する
  • 第四章 「つなぐ、試す、学ぶ」イノベーション・スパイラル
  • 第五章 希少性をめぐる地球規模の戦いが始まっている
  • おわりに



序盤は最近の分析から。
日本企業の利益率は向上するも、創出する付加価値は実は増大しておらず、人件費削減により利益を確保しているという現実を提示。
だからといって小さなパイの取り分で揉めるのではなく、パイ自体を大きくしていきましょう、そのためにはイノベーションによる新事業、新製品、新サービス、新ビジネスモデルの創造が必要だ、と説いています。
更に、イノベーション実現のためのクリティカル・リソースは人材だと結論付けられます。
中盤は主に組織論、運営論に論点が移り、イノベーションによる新ビジネス成功例を交えつつ、如何にしてイノベーションの芽を伸ばしていくか、如何にリスクを回避しつつ必要なリソースをアサインするか、といった各論が展開されていきます。
コンサルタントが本職である著者の本領発揮といったところでしょうか。
終盤はやや発散気味で、サービス業のグローバル化の必要性や、グローバルな観点からの日本企業の強み等について細々した事が述べられています。


多少消化不良感が残っていますが、人材をクリティカル・リソースに据えてイノベーションによる付加価値創出に重きを置こうという提言は説得力もあり賛同できます。
気になった点としては、クリティカル・リソースたるイノベーティブな人材をどう活用するかという組織体制論や運営論においては具体的で明確な記述がなされている一方で、人材育成や発掘については殆ど触れられていないことでしょうか。
著者が提唱するイノベーション・スパイラルの実現のためには独創性や発想力に溢れた優秀な人材を豊富に確保することが不可欠であり、そのためには大学・高校・義務教育における方針の大胆な見直しを行う必要があるのではないかと感じました。


利益力の源泉―いかに付加価値を創出するか

利益力の源泉―いかに付加価値を創出するか