若者はなぜ正社員になれないのか
川崎 昌平 著 / ちくま書房
さて、これはちょっと書評し辛い怪作です。
- 序章 定職がほしい
- 第1章 とにかく落ち続ける
- 第2章 「やりたいこと」が見つからない
- 第3章 面接という名の地獄
- 第4章 ハローワークへ行こう
- 第5章 ウチで働いてみませんか?
- おわりに
若者はなぜ3年で辞めるのかのような辛辣な告発書と思いきや、かなり意表を突かれる内容です。
一応は正社員になれない若者の就職活動を綴ったルポルタージュという体裁ではありますが、著者の川崎昌平氏がどんな人物かというと…
- 2000年 東京藝術大学先端芸術表現科入学。
- 2002年 Luner Cruise Project参加。大阪教育大学付属池田小学校表現プロジェクト参加。
- 2003年 平山郁夫賞受賞。
- 2006年 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程先端芸術表現専攻修了。
- 「Artists By Artists Cafe」「Reading Room」「横浜Eizone」といった展覧会に映像作品を出展。
- NHK教育番組「うごく絵じてん」に制作参加するなど幅広い表現活動に携わる。
- 「美術手帖」(2006年7月号9で「日本の新世代アーティスト108人」選ばれる。
と、かなりの立派な経歴です。しかも本書は4冊目の著作になります。
都内に実家もあるそうで、「正社員になれない」事に対する切迫感は殆ど感じられません。
文中で著者自ら「浪人」を名乗る一節があり、その飄々とした達観振りの一端が窺い知れます。
このような背景があるので著者の就職活動に対する態度はあくまでも一歩引いたものとなり、その視線は極めて冷徹です。
それ故に、一般の求職者からは一歩引いた視点からの克明で冷静なレポートが描かれています。
なかなか評価の難しい書ですが、著者も述べている通り若者の就職問題に関して考察するきっかけにはなります。
また、純粋に読み物としても楽しめる出来ですので一読の価値はあるでしょう。
- 作者: 川崎昌平
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/06
- メディア: 新書
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