ウソを見破る統計学 退屈させない統計入門

ウソを見破る統計学―退屈させない統計入門 (ブルーバックス)

ウソを見破る統計学―退屈させない統計入門 (ブルーバックス)

学力低下は錯覚である」の神永正博氏による統計学の入門書です。

  • 第1部 統計の基本にストーリーあり
    • 第1章 ボーナスが高い会社を狙え
      • 平均のウラの顔
      • 外れ値
      • 100万円なんてはした金
    • 第2章 間違いだらけの学部選び
      • 隠された情報
      • 混ぜるな、危険!
      • 高齢出産のリスク
    • 第3章 本番に強いのはどっちか
      • バラツキを測るには
      • 平均偏差・標準偏差・分散
      • なぜ標準偏差が使われるのか
      • たまにだけれど役に立つ
    • 第4章 その数学が就職を決める
      • 散布図
      • 相関いろいろ
      • 男が太れば、女は痩せる?
    • 第5章 テストの合否を推定せよ
      • 分布が出てくるメカニズム
      • 二項分布から正規分布
      • 合否を分ける天王山
      • 区間推定と誤差
      • 歪みのチェックをお忘れなく
    • 第6章 投資でウソをつく法
  • 第2部 隠れた関係をあぶりだす
    • 第7章 麦酒研究部はB型王国
      • 無に帰したい仮説
      • 観測度数と期待度数
      • 私たちってズレてるの?
      • カイ2乗値のパートナー、自由度を求める
      • P値はコーヒー?
      • 5%は仮設
      • 血液型性格診断を信じますか
    • 第8章 大人の事情
      • カイ2乗検定リターンズ
      • 正常と異常を分けるもの
      • 補正前、補正後
    • 第9章 肉で勝つ!
      • 意外な関係をあぶり出す ―回帰直線
      • R2値
      • うわべだけの関係
      • 重回帰分析
    • 第10章 長生きできる国、できない国
      • 曲がった関係を分析する
      • 直線回帰にハマらない場合
      • BMIの起源
      • がんばらないほうがトクをする?
      • 意外なことが寿命を延ばす
    • 第11章 男と女の分かれ道
  • 第3部 統計の深遠なる世界
    • 第12章 物語で人は動く
      • ポアソン分布
      • 馬に蹴られて亡くなった兵士の数
      • 事件は続く
      • サポートセンターを効率化
      • 待ち行列理論
      • 上手にお客さんをさばく術
    • 第13章 庶民の世界
      • 日本人の所得分布
      • 対数正規分布
      • コツコツ稼ぐ人たち
    • 第14章 お金持ちの世界
      • べき分布
      • 勝負をかける人たち
      • ブレーキのないF1レース
    • 第15章 株価の分布は取扱注意
      • 値動きの法則
      • 株価のモデルを考えるには
      • 市場にひそむ魔物の正体
      • 想定内の大暴落
      • シェルピンスキー・ガスケット
    • 第16章 世界記録はどこまで伸びるか
      • しっぽをつかめ!
      • トリニティ定理
      • 予測できること、できないこと
      • ワイブル族の大予言
    • 第17章 世界は分けようとしても分けられない
      • 金融危機のカラク
      • 山火事のめぐみ―反比例の法則
      • スモールワールド性
      • 科学者的進化論
  • 謝辞
  • さくいん

「難しい事を易しく、面白く伝える」というのは非常に難しい事ですが、本書は少なくともその半分は達成しています。

各節の構成はどれも同じで、前半部がショートストーリー、後半がその統計的な解説になっています。
構成としては「マンガでわかる統計学」と同じで、漫画の部分が文章になったようなものです。
後半の解説部では極力数式を使わず、統計の基本的な考え方を平易に説明しています。
初心者向けの解説ですが、いい加減な誤魔化しや方便としての嘘もなく、内容の正確さ・的確さは流石です。
前述の「難しい事を易しく」と言う課題が立派に達成されています。

残念なのは前半のショートストーリーです。
笑いを取りに行っているようですが、あまり成功しているとは思えません。
はっきり言ってしまえば、面白く無い。
架空の人物による、現実感の乏しいやり取りが繰り広げられていて、興味を持てる要素もありません。
学力低下は錯覚である」で感じたある種の小気味良さが完全に失われています。
前述の課題の後半、「面白く伝える」というのは残念ながら失敗のようです。

これ一冊で統計学を学ぶには無理がありますが、基本的な考え方を知るには向いていると思います。
少々残念な部分はあるものの、総合的に見れば読む価値のある、良書と言えそうです。